【キャリア】介護士の給料が上がりにくい理由
一般の会社では業績を出せば給与も上がって行くことが多く、給与が伸びなかったとしても実績があれば転職でグッと給与を上げていくことができますよね。
一方介護士さんは5年10年働いてもそこまで給与が伸びることがありません。確かに介護の技術は身についてくるし、いろんな利用者さんの症状に合わせて応用の介護ができるようになり、そんな介護士さんは貴重な存在になっていきます。
でもなぜサラリーマンのように給与が上がっていかないのでしょう。
給与が上がる仕事と上がらない仕事
シンプルに言えば、介護士さんが事業所へ就職したからといって、事業所の収益がグンと伸びることがないからです。
給料が上がる仕事
一般企業と介護事業所では、お金を生み出す構造が大きく違うんです。
一般企業のお客さんは一般消費者や他の企業であることが多く、無数にいると思ってもいいでしょう。ビジネスをする地域を広げたり、他社のシェアを奪ったりして、売り上げを伸ばし続けることができるのです。
例えば営業マンの場合、商品を売れば売るほどその会社の売り上げが増えていきます。
稼ぐ営業マンによって会社の売り上げが増えると、会社は稼ぐ営業マンに与える見返りも増やすことができます。
給料が上がらない仕事
一方介護事業者はと言うと、お客さんの数(利用者数)が施設のサイズによって決まっています。
売り上げ = 利用者数 × サービス提供料(介護保険料&利用者負担)
がMAXです。どんな優秀な介護士が入社したとしてもこれは変わらないのです。
そうなると、どんなに介護士一人一人が頑張ったり能力が高くても事業所の売り上げに跳ね返ることがほぼないので、事業所も介護士に見返りを増やすことができないのです。
介護事業所は残業を払いにくい
介護士がどんなに働いても事業所が得られる収益は変わらないと言うことは、残業代を払いにくい、と言う理由にも繋がっています。
もし仕事が残って介護士さんが残業をしたとしても、残業代を支払うと人件費がかさんで利益が減るか赤字になってしまうので、なかなか残業代を払いにくいのです。
これが、介護業界に残業が多い理由です。
残業を減らすために各介護事業所にはICT等を利用した業務の効率化が求められていますが、ITリテラシーが高い管理者や経験者が少なく導入しても使いこなしている事業所は少ないかもしれません。
給与を上げるにはどうすれば良いか
ではずっと介護業界で働いても給与が全然変わらないなら他の業界に移った方がいいのか?と言うとそうではありません。
理由は、下記の3つです。
1. 介護業界はキャリアのステップがしっかりしている
2. 重要な役職に就きやすい
3. 優秀な人にお金が入りやすい構造になってきている
1. 介護業界はキャリアのステップがしっかりしている
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介護業界は、「役職」と「職務内容」によってキャリアのステップアップができるのです。
介護職員処遇改善加算と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。
介護職員の賃金を改善するため平成30年から新たに設けられた制度で、事業所は下記条件を満たして報告すれば、職員の給与に上乗せする分を自治体からもらえるのです。
そして平成30年時点でも91.1%の事業所がこの制度を利用しています。
参考にこちらご覧ください。
介護職員の勤続年数別平均月給(常勤)
介護職員の保有資格別平均月給(常勤)
【出典】平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要 http://bit.ly/31vYbP6
これを見ると、年数が上がるにつれて給与も上がっていることがわかります。介護職員処遇改善加算の通り、事業所内で任せられる仕事が増えていくことや(職務内容が広がる)、役職が上がっていくことが理由です。
介護職員として事業所で働いても、平均で年収360万円くらいまでは行きやすいことがわかります。
また、それに近づくためには早く介護福祉士を取得するとこが非常に大切だと言うことがわかります。
2. 重要な役職に就きやすい
また役職によって業務の幅が広がり給与が上げていけるなら、早く主任やリーダー、管理者になっていきたいですよね。
一般企業では上のポジションに就くことはかなり実績を上げていく必要があります。
ところが介護業界は上のポジションに就くことが比較的簡単になってきています。
その理由は人材不足です。
ご覧の通り、この先も更に介護職員が足りなくなっていきます。
これは言い換えると、責任ある立場である主任やリーダー、管理者になれる人材も減っていると言うことです。
また介護業界はもともと向上心を持っている方が比較的少なく、上のポジションに就きたくない、と考える人も少なくありません。(一般企業の人から見ると驚きです)
このような業界特性上、上のポジションに就いて年収を上げていきやすい環境でもあります。
特別養護老人ホームやや有料老人ホームの管理者になれば、年収600万以上になることもあります。
低賃金だと言われる介護業界も、努力次第でステップアップしていきやすいんです。まずは自分の事業所のキャリア制度について、改めて調べてみましょう。
3. 優秀な人にお金が入りやすい構造になってきている
介護業界は人材不足な上に、早期離職者が非常に多い業界です。
介護業界の平均離職率は16.2%と言われており全産業の8.5%よりかなり高い上、離職した人の39%は就職してから1年未満に離職しています。
1人の介護士を採用するのに、求人広告や面接や事務手続きにかかった時間などで10万円かかったとして、入社後に先輩職員からの教育コストもかかりますので20万円がかかったとします。
求人広告や人材紹介を使うとこれが更に跳ね上がり、トータルで100万近くになることもあります。
こんなにお金をかけて採用し育てた職員が1年未満に止めると、事業所はまた同じコストを支払う事になり経営が危うくなってきます。
ですがこれが今多くの事業所で起きている事実です。
もし職員が辞めないマネジメントができる「優秀な管理者」がいればどうでしょうか。採用・教育コストはかなり下がり経営が一気に安定します。
この人材不足の中、職員を引き止めておくことができる管理者はかなり貴重なのです。
離職が減ってコスト削減できた分、法人は「優秀な管理者」に見返りを払いやすくなりますよね。
これが優秀な人にお金が入ってきやすい理由です。
こちらには介護士が最短で年収を上げていく方法をまとめていますので興味があれば是非読んでみてください。
最後に
介護士の給料が上がりにくい一方、キャリアアップの制度がしっかりしていますし、介護士の給与が上がるよう国も処遇加算や特定処遇加算という制度も設けられています。
努力次第で年収を上がりますが、良い事業所で長く勤めることと、きちんと資格や上に登る能力を身につけていくことが大切です。
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